自己矛盾ターコイズ

徒然なるままに。本を読みます。

千歳くんはラムネ瓶のなか 1・2【チラムネ】

『千歳くんはラムネ瓶のなか』、通称『チラムネ』は主人公がリア充という(自分の経験では)珍しいラノベである。『このライトノベルがすごい』2021,2022年で2連覇している。しかもデビュー作である。過去には『SAO』や『俺ガイル』が連覇で受賞している。2023年では惜しくも2位であったようだ。
 
普段はあまりラノベを読まないのだが、この作品を読むに至った理由は単純で、
母校がモデルになっているらしい
と聞いたからである。
私の母校は福井県立高志高等学校である。本作の主人公が通う高校は「藤志(ふじ)高校」であり、校舎のモデルは福井県内で最も偏差値の高い進学校「藤島高校」、高校の位置のモデルが「高志高校」となっている。2つの名前を合わせて「藤志」になったというわけらしい。片割れとして、もう一つ、別の高校名として、作品内には「高島高校」が出てくる。
 
まず読む前に思ったこととしては、「リア充が主人公の本を読んで何が楽しいんだ?」ということなのだが、リア充について勘違いしていたことを詫びたい。
チラムネの中でも説明されている通り、リア充には2種類存在する。要するに良い方のリア充が本作の主人公「千歳朔」なのだ。運動神経も抜群で、頭も回り、小説も読む。普通の物語の主人公は「小説を読む」くらいのことしかしていないではないか。何でもできすぎだ。
そんな万能青年が1巻では引きこもりオタクを雰囲気イケメンと言えるほどに成長させる(それも高2の4月の間だけで)。2巻では高2から同じクラスになった美少女に付きまとう問題を解決する。まだ2巻までしか読んでいないが、このように、困っている人を千歳朔らしいやり方で解決していくのである。ラノベやなろう系でありがちな、ハレンチシーンがあるかというと、ほとんど健全な高校生の眩しい物語として進んでいく。会話のノリが(若さゆえか)ちょっと痛かったりするが、それも気にならないくらい展開も面白い。内容としても恋愛要素(?)、ミステリー要素などが含まれている
 
だが、最も面白い部分は、福井県について詳しすぎるところである。それもそのはずで、作者は福井県出身なのだが、ところどころ福井県民ネタを豊富に入れてくる。ネイティブ福井弁(注釈あり)であったり、カツ丼といえばソースカツ丼であったり、8番ラーメンであったりなど。さらに、スタバが福井駅前にはなく、スタバに入れるのはキラキラした人間だけでオタクはスタバには行かないというところなど(※北陸新幹線のおかげで2024年3月16日から福井駅にマックが戻ってきて、スタバもできるそうです)。また、東京に進学するか福井に残るか、という高校生特有の迷いについても書かれているようで、自分は東京に進学してしまったが、当時のことを思い出して懐かしい、感慨深くなってしまった。
 
福井出身だから面白く感じたのかと思うと、そうでもないようで、一般に人気があるらしい。福井出身以外の人はどういうところを面白いと思っているのか気になる。聖地巡礼ということで福井県がさらに盛り上がるきっかけになれば嬉しい限りである。