自己矛盾ターコイズ

徒然なるままに。本を読みます。

【先入観どんでん返し】『逆ソクラテス』

どんでん返し屋さんである伊坂幸太郎の5つの短編からなる短編集である。

実は伊坂幸太郎の作品を読むのは初めてだったので、いつものどんでん返しがどんなものなのか良くわかっていない。

 

1作目の『逆ソクラテス』について感想を記そう。

無知の知」は誰しもが聞いたことがあると思うが、その逆であり、自分の判断が絶対正しいと思っている教師がいわば「逆ソクラテス」である(タイトル回収)。教師期待効果(ピグマリオン効果ともいう)という教育心理学の用語が一つのテーマとも言える。この物語では、「ダメな子」というレッテルを貼られた草壁が実際に自信をなくし、クラスメイトからも「ダメなやつ」だと思われるようになってしまう。担任教師の判断が必ずしも正しくないとわからせて、改心させようという目的で、草壁に(カンニングによって)テストで高得点を取らせるところから物語が始まる。主人公たちは「僕はそうは思わない」という言葉で先生に立ち向かう。

教師期待効果という心理効果を知らなかったのだが、ポジティブな意味であれば実体験として知っていた。中学からなぜか親や先生に期待されるようになり、高校でも親や先生、クラスメイトからの期待があって勉強に励んだという記憶がある。これは正のフィードバックとも言えるだろうが、勉強を頑張れば頑張るほど良い結果が得られ、その繰り返しになっていった。終わりよければすべてよし、という風にもいうが、最初のテストの結果が良ければ良いほど教師に期待されて、さらに良い結果を生むのではないだろうか。では最初に失敗したら終わりなのか?というと、周りの環境が大事という話なのだと思う。もしも応援してくれるような親や教師がいれば、頑張ろうという気にもなれるものではないだろうか。小学校の段階から(成熟の早い子では保育園くらいから?)、教師期待効果による正のフィードバックのループに乗ることができれば、子育ても楽なのかもしれない。仮にそのループに乗せられなかった、つまり悪い教師と出会ってしまった場合に(小説や映画作品では悪い教師が出てくることが多い気がする。今思えば、自分が今まで出会ってきた教師の中にもそういう教師はいたに違いないが、先述した通り期待されていることが多かったので気づかなかった。きっと多くの場合は悪い教師に出会うのだろうと推察される)、子供が「僕はそうは思わない」と思えるようにせめで親だけでもそういう教育をするべきだろう。親として、歪んだ悲観的な人間に育たないようにしたいと思う。